文フリガイド編集委員会通信

文学フリマガイドブック(通称:文フリガイド)の編集状況についてお知らせするブログです

推薦作募集に際し、どういう文フリガイドでありたいか

 皆さん、こんにちは。秋山です。
 今回は改めてという形になりますが、推薦作を募集するにあたって、どういう文フリガイドを目指したいか、という話をします。

 編集者を募集する際に、私は、こういうことを書きました。

 通算第8号を発行する上で、いちばん念頭に置いているのは価値の創出です。一般来場者にとっては参考にしたいガイドであり、出店者にとっては販促に役立てたいガイドになることを目指しています。価値、と表現すると、なんだかぼんやりしていますが、平易な表現に替えれば、つまりは説得力です。来場者にとっては、ガイドを買えば、自分好みの作品がびしっと分かり、出店者にとってはガイドに掲載されることによって、より注目を浴びやすくなる。そういう、双方にとって嬉しく、良いガイドにしたいと考えています。

http://bunfreeug.hatenablog.com/entry/2015/06/29/234210

 ここで言う「価値」は曖昧で分かりにくいものです。
 ですので分かりやすくするために「価値」を「説得力」という言葉に置き換えて、さらに「説得力」のひとつの要素として「数」を挙げました(「数」に関する話は引用元をご覧ください)。しかし「数」は極めて即物的であり、また表面的なものに過ぎません。実際に手を動かしていただける編集者を募集するにあたっては良い表現かもしれませんが、推薦作を募集しようかどうしようか悩んでいる方に向けては、別の表現を用意するべきでした。

 そこで順番が前後することになりますが、推薦作を募集するにあたって、私の想いを言葉にさせていただきます。推薦作を応募しようか迷われている方は、是非、読んでいただけると幸いです。
 少々、長くなるので折りたたみます。

 結論から言うと、文フリガイドは、ひとつのにしたいと考えています。
 それも、自由な場です。

 文フリガイドの主役は、編集委員会ではありません。
 主役は推薦者です。
 今一度、構造を明らかにさせてください。
 文フリガイドは大きくふたつの目的を持っています。それは、一般来場者に価値ある同人誌を提案することと、出店者に対し販売促進の支援をすることです。
 では、誰が提案し、誰が支援するのでしょうか。
 一般来場者に提案するのは推薦者です。ひとりひとりが「これは面白い、これは広く紹介したい」と思った同人誌を、文フリガイド編集委員会に推薦していただきます。編集委員会は査読の上、紹介するに足ると判断すれば、推薦者による推薦文を掲載して、一般来場者に提案します。
 出店者を支援するのは編集委員会です。推薦者によって推薦された作品が、さらに多くの、その作品に触れたいと思っている読者に届くように、支援させていただきます。
 主役を推薦者と書いたのは、編集委員会だけでは文フリガイドを作ることができないからです。推薦者による推薦作の応募があってはじめて、編集委員会は動けるのです

「査読の上、紹介するに足ると判断する」とはどういうことか? という疑問を抱かれた方に説明します。
 次号の文フリガイドは、A5判で52ページの本にします。掲載する作品は上限50作です。51作以上の応募があった場合は、泣く泣く50作になるよう調整します。逆に、50作に満たない場合は、原則として応募された推薦作のすべてを掲載します
 大事なことなので、もう一度、書きます。
 たとえば反社会的勢力に与したりですとか、特定の個人を攻撃するような問題ある作品でない限り、推薦作の応募が50作に満たなければ、推薦作はすべて掲載します。

 過去の文学フリマにおいて頒布された作品(文フリガイド6号~7号掲載作を除く)であれば、何であろうと推薦いただけます。推薦文を書く意志があり、推薦作を編集委員会に貸していただける方ならば、誰であろうと推薦者になることができます。
 誰を拒否することもなく、門戸は開かれています。
 広場を想像してください。
 推薦者は誰でも、推薦作を手に携えて、広場で演説することができます。他のひとの作品を推薦していただいても構いませんし、自分の作品を推薦いただいても構いません、何作、推薦いただいても大丈夫です。編集委員会は、広場のすみっこでゴミを片付けたり、ホウキを掛けたりしています。広場内に推薦作が増えすぎてしまって、大変になってきたら、何人かの推薦者に「すみません」と言ってお引き取りを願うことになりますが、そうならなければすみっこにいます。多分、将棋でも指しながらお茶を飲んでいることでしょう。
 想像できましたでしょうか。

 私自身、文学フリマには第三回から参加しています、大阪や金沢にも行きましたし、設営も手伝っています。文フリガイドには第2版から携わっています。アンケートを実施して、広く意見をいただきました。諸々を鑑みて、今の文学フリマには、上に書いた広場のような文フリガイドが適しているのではないかと考えています。
 良いと思うんですよね。
 文学フリマ自体とも、とても親和性が高い形態ではないかと思います。
 ここを読んでいる方には、今さらにすぎるかもしれませんが、文学フリマは元より自由度の高いイベントです。公式サイトから、少し引用させてください。

 自分が〈文学〉と信じるもの――自費出版の本はもちろんのこと、ホッチキスで綴じただけのコピー誌、フロッピーディスクやCD-ROM、果てはTシャツまで――を売るイベントです。

http://bunfree.net/?%CA%B8%B3%D8%A5%D5%A5%EA%A5%DE%A4%C8%A4%CF

 出店者が「これは〈文学〉です!」と信じる限り「〈文学〉とは何か?」という議論をすっ飛ばして、何でも自由に売れてしまうイベントなんて、他に類を見ないでしょう。
 自由度が高いことは内容が多岐にわたり、幅が広いことも意味します。文学フリマ当日、全ブースをくまなく見回せば、自分好みの作品に出会えるかもしれませんが、時間は有限ですし、そもそも文章系同人誌というのは、パッと見で自分の好みかどうかを判断するのが難しいものです。
 なので、誰でも推薦者として参加できるスタイルで、広い間口で推薦を受け付けて、幅広いジャンルの作品を紹介する文フリガイドは、特に相性が良いと思います。

 だから文フリガイドは、場にしたいと思っています。
 誰でも自由に出入りできる場に。

 今は、この形が最適解だと自信をもって言えます。
 ですが永続はしないでしょう。
 編集委員会を運営したいと思うひとがいなくなったり、文フリガイド自体に価値なしの烙印を押され、200円を出して買っていただけるひとがいなくなったり、もっと良い場が生まれて推薦していただけるひとがいなくなったり、そもそも文学フリマというイベント自体に、推薦したいと思わせるだけの作品が頒布されなくなったり、はたまた文学フリマ自体が終わってしまったり。可能性は色々と考えられます。
 まあ、状況が変わったら、文フリガイドも変わっていけばいいでしょう。
 元より文フリガイドは、非公式時代の佐藤さん、高村さん、非公式の三文字が外れてからの想さん、そして秋山になってからと、その在り方は大きく変わってきています。正直、こんなにころころと内実が激変するガイドも珍しいでしょう。
 でも、悪いとは思いません。
 むしろ、望ましいのではないでしょうか。
 絶えずより良い形を考え、試行錯誤しつつ、長い目で見れば進化していく。良いと思います。

 自分で自分を評価するだなんて世話がありませんが、ここで明らかにしたいのは、私自身が、この形を最適解であると信じていることです。
 きっと良いガイドになります。
 今この瞬間において、これ以上はないでしょう。
 そして、もう一度、繰り返しておきます。

 この素晴らしいガイドの主役は編集委員会ではありません
 推薦者です

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